ペリゴールPERIGORD地方周辺紀行(その5 アルカションArcachon)

8月14日(火)
朝飯は日本から持参したインスタント赤飯で済ませ、7:50 Les Eyzies駅からアジャンAgen行き列車に乗り8:05に例の殺風景な乗り継ぎ駅ル・ブイッソンLeBuissonで下車。8:10分 LeBuisson駅からボルドーBordeaux行き列車に乗り換え。この列車もそこそこ混んでいます。途中、ワインの産地ベルジュラック Bergerac沿線の景色を楽しみにしていましたが、ブドウ畑に点在する農家の建物が見えかくれするだけの平凡な車窓で、退屈なものでした。やがて、列 車は大きな川の鉄橋 を渡ります。ガロンヌ川です。もうボルドーに着きます。10:09ボルドー・サンジャン駅Bordeaux St Jeanに到着。さすがに大きな駅です。この駅を訪れるのは4回目です。することもなく待合室でじっと時間をつぶしていました。ボルドー11:30発のア ルカション Arcachon行き列車に早めに乗り、何とか座れましたが、こんどこそ満員で、ジーパンの若者がめだち、立っている乗客も増えてきました。12:08ア ルカション 着。きれいなかわいい駅です。駅から真っ直ぐ海を目指して10分ほど歩くと、簡単に今夜宿泊するホテルパークインHotel Park Innに着きました。5月初めにインターネットの日本、フランスの旅行会社のHPから、Arcachonのホテルを申し込んでみたのですが、ハイシーズン とあって、いずれも8月14日の空き室はありませんでした。あきらめかけたのですが、例によって、旅行業者を通さずに、自分独自でインターネット検索で粘 り強く探した結果、幸運にも旅行業者を使わず自社独自のHPを持っている、Park Inn Hotelチェーンのサイトを見つけ、そこから部屋を予約することが出来ました。それが何と、ビーチに面した一番立地条件の良い高級ホテルです。ですから 部屋で水 着になりビーチに直行し、浜から水着のままホテルに戻り部屋で着替えられるのです。さすが大都市ボルドー近郊のフランス有数の海水浴場です。人、 人、 人、で溢れ、浜辺のどのレストランも満員盛況です。混雑を避けて海岸の裏通りにあるレ ストランで、ムール貝、スパゲッテイ、エビ入りサラダなどの昼食をとり、その後、街の散策開始。海岸に並行して走る通りもありますが、その一本裏の大通り が ブールバール・ド・ラ・プラージュBd de la Plageで、海は見えませんが、ホテルや商店街が連なります。歩いていくと、上等な木綿製の衣類がSoldで半額になっているお店に出会いました。朝夕 寒いと云っていた子供にハーフコートを買うことにしました。シンプルでとてもすてきなシルエットです。ブランドマークがあり、高床式の家のシルエットと Ile au Oiseaux鳥の島という文字とが付いています。高床式の家、これはインド洋か、南太平洋のどこかの島で作った物に違いない、でも品質が良いから買いま しょう。とい うわけで、店のおじさんにどこの国で作られたものですか、とたずねると、フランスではないよ、たしかモロッコかな、との答え。なんだか、私の予想が外れた ようです。
午後日差しが強く暑くなって海水浴日和です。部屋で水着に着替え、砂浜に出てみると、桟橋の左手は大勢の海水浴客で混んでいます。桟橋の右手はまだ余裕が あります。で、桟橋の右手の空いている砂浜を選びました。レジャーシートを敷いて座り、辺りを見回すとなぜか腹の出たおじちゃんや、お乳のしなびたおば ちゃんと子供達が目立ち、若い水着美人はほとんど居ません。更に砂浜の奥に目をやると、そこにはずらっと貸しレジデンス(1週間単位の貸部屋、キッチン冷 蔵庫付き、自炊が出来て安上がり)が連なっています。つまりは、長期滞在型の家族、お年寄りがすぐ前の海岸で日光浴をしているのです。これなら、混んでい ても若い人で溢れていたホテル前の桟橋左手の砂浜にいけばよかった。でも今更面倒くさいし、まあいいか。
大西洋の水は地中海に比べて冷たいのですが、ここは湾内ですから適温です。10メートルくらい沖で足が立たなくなります。その50メートル沖には多数の ヨットが浮かんでいます。美しい風景を見ながら泳ぐのは格別です。いつの間にかレジャーシートの近くまで波が打ち寄せてきています。満潮になってきたので す。良い頃合いなので、ビーチを引き上げ、ホテルの部屋でシャワーを浴び着替えました。(一般にフランスの海水浴場には無料のシャワーが設置されていて、 通常、海水浴客はそれを使います)
再び海岸に出て、今度はながーい砂浜を港に向かって歩くことにしました、砂浜の先は海水浴をする人、ヨット遊びをする人が同時に見えま す。砂浜の陸地側には黒色の木道が海岸に平行して延々と走っています、道幅は広く、歩行者用と自転車専用に分かれていて、時折、自転車が横を走り抜けてい きます (自転車好きのフランスならではの光景)。港までは、見えているのですが歩くと遠いもので30分以上かかってしまいました。ヨットや、漁船が沢山停泊して いま す。足が疲れて、くたびれ儲けかと思ったら、さにあらず、港から一歩入った大通りすなわち、Bd de la Plageに出て、あたりを見回すと、地図でどこに在るのかわからなかった、Hacetteアシェットのガイドブックに掲載されていた、安くておいしい、 フラ ンス人お薦めのレストランRestaurant La Taverne du Pecheur (84 bis,bd de la plage)を発見!やったね!お店に入ったときはまだ7時開店早々だったので、他に1組の客が居ただけでしたが、30分後にはもう満員。フランス人の皆 さ んよくご存 じです。海産物専門店で、室内は船の中のようなデザインです。今日はおごって一番高価な海の幸盛り合わせPlat de Fruits de merを注文しました。生のムール貝を食べるなんて初めて、コリコリしています。ツブ貝をほじくり出して、蛤を生で食べて、ボイルした手長エビ、ボイルし た大きな蟹、味噌がたっぷりです。確かに、安くて美味しくて、大満足。夕食後、元来た砂浜沿いの道を帰ります。午後9時頃で、日没前、海は夕日に染まって 輝いていま す。そのまま私達のホテル前を通り越して、海沿いを歩いて行くと、野外音楽の舞台がしつらえてあり、丁度、夜のコンサートが始まったところです。舞台を見 るとArcachon150周年記念と書かれています。ギター、サキソフォン、ドラムスで構成されたバンドで、中心はボーカルの男性。汗びっしょりの熱演 で、集まった観客の前列の人たちは楽しそうにリズムに合わせて踊っています。今日14日と明日15日がアルカション開発150年記念日で、明晩は花火も予 定されているというのですから、私達は良い時に訪れたものです。お祭りでは、ホテルの空き室が無いのも、当然です。


(写真左上Arcacuonのビーチ、右上Restaurant La Taverne du Pecheur、中フリュイドメール、左下夕暮れの浜辺、左右夜の野外コンサート。)

8月15日
朝起きると、子供がベッドの寝心地が良くないといいます。3人で使うので、部屋はツインベッドに折りたたみ簡易ベッドを入れています。簡易 ベッドの点検をしてみると、肝心のベッドを支える背中部分の板が、3枚も接合部から外れていました。それを入れ直して、今夜は私が使うことにし、結果 good。Hotel Park Innはモダンな内装で、赤、青、黄、緑の原色をうまく組み合わせた色使いで、居心地がよい。朝食の食堂は同じ色使いで、テーブル毎に別の色になってい て、まるでモダーンカフェにいるような明るい雰囲気です。
今日はアルカション湾Bassin d'Arcachonめぐりの船に乗ります。午前10時桟橋横の切符売り場で10:30発の券を買いました。一人13.5ユーロ。桟橋の乗船場付近で待機 していると、お巡りさんが来て、今日はここで式典があるから、出て下さいといってロープを張り始めました。付近の人たちは皆去っていきましたが、私達は乗 船するものですから、と答えると、なら残っていい、といわれました。しばらくして別の警官が、まだ残って居る私達のところに来て、実は、今日に限ってだ が、お祭りのため、船は向かい側の桟橋から出ることになっているから、早く行きなさいというのです。出航まであと6分くらいしかありません。200メート ル以上は距離がありそうな別の桟橋までたどり着けるだろうか。とっさに桟橋横の先ほどの切符売り場のおばちゃんに頼んで船まで電話連絡してもらって、砂浜 横の道 を3人で走った。一人が先に着けば船も待ってくれるだろう、と年長の私は足がつらないように最後尾を走った。どうにか駆け込み乗船。10:30出航。アル カショ ン湾は結構広くて、1時間30分遊覧し12:00元の桟橋に戻りました。途中、飾り立てたお祭りの赤い船団が見えたり、遠く砂丘が見えたり、波も穏やかで 快適な湾廻りでした。でも、後半ちょっと雲行きが怪しく、冷たい風がふいてきました。
そして、昨日の洋服屋さんでの疑問が、このアルカション湾巡りの船で解決されました。実は、イル・オー・オワゾーIle au Oiseauxはアルカション湾の中程にあり、島全体は周囲5ー6kmくらい(潮の満ち干で変わる低い島)で、島の中に潮が満ちてきても大丈夫なように高 床式の野鳥観測用の小屋が建ててあ るのです。船内の説明ではナポレオン3世が作らせたと言っていたようでした。このように歴史がある建物です。その周辺の湾内にはカキの養殖、ムール貝の養 殖場 になっていて、目印の杭が林立してい ます。そういうわけで、le au Oiseauxは地元ではれっきとしたブランド商品だったのです。
赤い幕が印象深かったので、このile au oiseauxの鳥観測小屋を今回の紀行のタイトルに選
びました。


(図左上アルカション湾、図上右、湾の中央にIle au Oiseauxが在る。写真中遊覧船から見たIle au Oiseaux、写真下 船から見た海水浴場。中央の高い建物がホテルPark Inn.)

海岸の一角にテントが張られ、アルカション15周年記念の寄付を募っていましたので、子供に2ユーロを出させ、黄色い150周年の名入り布片をもらいまし た。良い記念になります。人々は、思い思いに黄色い布を首に巻いたり荷物に付けたりして歩いています。フランスでは8月15日はマリア昇天祭といって、お 店が休 みになることが多いのですが、今日ばかりはアルカションのたいていの店が開いていて、大勢の人が出ています。曇り日なので、海水浴客は昨日よりは少ないよ うです。

(写真 桟橋からみたアルカションの街、黒白黄色の旗がArcaconの旗、奥の方に見える黄色い旗は150周年記念旗。)
子供と妻は記念行事のレガッタレースを見に行きましたが、私は一人でベンチに座り海水浴場のスケッチです。描いている途中で自転車のおじさんが海岸ニュー スという 無料の新聞を配っていきました。今度はお嬢さんとおばさんの中間くらいの女性3人が私を取り囲んで、まあスケッチをなさっているのですか、お上手ね、と声 をかけてきます。まだ、描き始めたばかりで輪郭も描き終わらないのに、変だなと思ったら、やはりそうでした、近くの教会に一度お出かけ下さいなとしつこく 誘ってきます。私は日本人で仏教徒だからいやです、と断ってもしつこく繰り返します。キリスト教の勧誘チームです。これでは絵を描くどころではありませ ん。やっと名刺を置いて立ち去りました。10分ぐらい時間を無駄にしました。ベンチに筆洗い用の水を入れたコップを置いていたら、じいさんがやってきて、 俺にも座らせろ、ベンチを独り占めするな、と云われました。はいはいすみません、どうぞお座り下さい、などと2時間30分かかってスケッチが完成しまし た。午後6時頃から黒雲 に覆われ、強風が吹き、オラージュ(嵐)だ、と人々が叫びます。軒下で雨宿りしますが、雨は更に激しさを増します。家族にホテルまで傘を取りに行ってもら います。雨の中を傘のない人達が足早に歩いていきます。傘を手にしても、人が考えることは皆同じ、レストランに入って雨が収まるのを待とう。昼過ぎ見定め ておいた、通りの外れのインド料理屋ならば入れるかと思い、行ってみると、すでに満員で1時間以上待ってくださいと店員が言う。軒下のオーニングの所でい いから、と席を作ってもらい、雨滴が少々背中にかかっても我慢です。更に、次々と客が駆け込んできて、あきらめて帰る者、雨中に傘を差してじっと立って待 つ者、強引にテーブルを追加させ、半分濡れながら座る人、と大変な騒ぎです。すぐに店員が注文取をりに来て、鶏、エビ、羊、野菜カレーのどれにしようかと 考えていると、お客さん、その全部のカレーが少量ずつでてきますよという。それじゃいわゆるお試しコース(デギュスタシオンdegustation)です か、はいそうです。その中では羊、エビカレーがとても美味しかった。鶏は普通。野菜はいまいち。これをナンにつけたりご飯にかけて食べます。辛さが足りな いので、唐辛子 粉を持ってきてもらい、美味しくいただきました。夕食が終わると午後9時。ようやく雨もやんで、人々は海岸に集まって、思い思いに花火を見るための陣地を 取り、開始を待ちました。ぴゅーんと音がして、パンと小さな花火があがります。砂浜で、子供が花火を打ち上げたのです。そんなのじゃなく、大きいのを待っ ていると、お巡りさんが拡声器を持って、歩いてきます。交通整理ではなくて、「今夜の花火は雨のため中止、一週間後の22日に延期」と告げて回ります。人 々はぞろぞろと残念そうに帰っていきます。ロックコンサートも今夜は中止です。私達は来週日本にいます。恨めしい夕立です。おみやげ屋でArcachon マークの野球帽を買ってホテルに帰りました。
ペリゴールPERIGORD地方周辺紀行(その6 再びトウルーズ) に続く