1999年南仏夏の音楽祭 宇都宮輝子さんの報告 

フランスの田舎に点在する中世ロマネスクの教会や修道院を訪ねる旅に夢中になっています。今年の夏はそれに加えてオペラ好きな友人たちとエクス・アン・プロヴァンスとオランジュでオペラを観てきました。

エクスの会場は旧司教館の中庭でオッフェンバックの「麗わしのエレ-ヌ」とモンテヴェルデイの「ポッペアの戴冠」.オランジュは世界遺産にもなっている古代劇場での

ヴェルデイ「椿姫」でした。チケットも直接申しこみましたので.第一線で活躍中の歌手たちの素晴らしい歌を割安で楽しむことができました。

イタリアの古都ラヴェンナで.「ドン・ジョヴァンニ」(ム-テイ指揮.カルロス・アルバレツB.マリエッラ・デヴィ-アSミヒャエル・シャ-デT.アンジェリカ・キルヒェシュラ-S)の観劇とビザンチンのモザイクを堪能した翌日.まだモ-ツアルトの音楽と煌めくモザイクの余韻にひたりながら南仏へ。

ラヴェンナ0830〜ボロ-ニャ0945(train)1145〜ミラノ経由マルセイユ1615(AZair)の予定だったが飛行機が遅れてエクス・アン・プロヴァンスのhotel Le Manoir(シングル約8000円シャワ-のみ)に到着したのは開演2時間前.ゆっくり夕食をとる間もなく今夜のオペラ「ポッペアの戴冠」の催される旧司教館(タペスリ-美術館)へ。正面入り口を抜けるとすぐ中庭があり右手が舞台で客席は一部二階になっている(1000席) チケットは全部リ-ダ-がFAXで申しこみ郵送のサ-ヴィスもあったようです。一等席といってもばらつきがありましたが.今回の六つのオペラ合計で約10万円でした。バロック古楽器の心にやさしく響く音楽とまさにフランスらしく洒落た舞台が印象的(イタリアの演出との違い!)なオペラでした。

「ポッペアの戴冠」(ミンコウスキ-指揮.アンネ・ゾフィ・フォン・オッタ-MS.ミレイル・デルンシュS.ロライネ・フントMS)野外ですし.終演は真夜中なのでウ-ルのスト-ルがしっかり役にたちました。夜食はテイクアウトのピザをホテルのロビ-の片隅でいただきながら.オペラ談義に花を咲かせました。この夜は郊外のシャト-の庭で「魔笛」もあり友人2人がそちらを観劇したので.無事に帰ってきた姿をみて一安心。あわただしかった一日(移動日にオペラはつらい....!)が終わりました。

翌日は1日フリ-なので朝寝坊して10時ごろツ-リスト・ビユウロ-ヘロマネスク美術シト-派の修道院シルヴァカンヌのあるリュベロン地方めぐりの翌日のツア-を予約して.支庁舎広場近くの青空市場でお買い物。蔓付きのトマトの良い香り!メロン.木苺.さくらんぼ.オリ-ブ漬.ワインなどホテルでランチ。夕食は8名全員でホテルで紹介.予約してもらった近くの魚料理が美味しいというレストランでブイヤベ-スをいただきました。さてエクス・アン・プロヴァンスも3日めになり.バスツア-は午後から

なのでミラボ-通りを散歩しながらグラネ美術館へ。思いがけなく好きなフランドルの画家カンパンの絵画がありル・ナン兄弟の名品ありでした。昼休みになりアングルの大作「ユピテルとテテイス」が観られず残念!この日も35度を超える暑さでついつい昼間から「ビエ-ル.シルヴプレ!」と叫ばずにいられないのでした。札幌の我が家はさぞ涼しかろと電話してみました。例年にない猛暑でしかも南仏より蒸し暑いらしく夫に「そっちに行きたいよ」と言われてしまう。冷房のない我が家を尻目に遊び歩く妻って.そのうち追い出されるかも.......。

エクス・アン・プロヴァンスのInformationはとても充実していて曜日毎に毎日違うバスツア-を出発させています。(日本語のパンフレットもある)そのせいか日本人の女性が多く同じバスに私たち4人を含め8人乗り合わせました。遠くにリュベロン山脈をながめながら.念願の修道院やシャト-を見学7時過ぎにホテルに戻り.今夜もオペラのため軽くベトナム料理での夕食(生春巻きが美味)をとり一昨日と同じ会場へ。オッフェンバックの「麗しのエレ-ヌ」はあまり知られてないオペラなので同行のくわしい方に資料もいただいていたのですが.予習する暇もなく旅に出てしまったのです。エレ-ヌはトロイ戦争の原因にもなった美女でパリスとの恋あり.ギリシャの王たちのドタバタあり.現代風の演出とフランス語の壁厚くついウトウトしてしまいました。「麗しのエレ-ヌ」(オリヴィエ・カスパ-指揮.ノラ・グビシュSアレクサンドル・バデアT.ドミニク・ヴィスCT)カウンタ-・テナ-のドミニクは映画「カストラ-ト」にも出演。評判どうりの美声で男性の声とはとうてい思えない素晴らしい高音はこのオペラのハイライトでした。

翌日は3泊したエクス・アン・プロヴァンスを後に11時頃のtrainで〜マルセイユ(乗り換え時間があり駅構内のブッフェで昼食)〜オランジュへ駅前のホテルLouvre et terminusに1泊.(約12000円シングル.バスつき)部屋も広くバスル-ムのトイレは仕切られ化粧用のコ-ナ-も使いやすく中庭にプ-ルもある。オペラ会場の古代劇場まで徒歩20分くらい.途中のレストランで夕食をとり次第に暮れてゆく街の散策を楽しみながらアレ-ナヘ。入り口近くで小さなプロヴァンス模様のクッシヨンを買い大勢の人をかきわけ.ようやく自分たちを見つけることができました。

イタリア・ヴェロ-ナの円形劇場と違うところは平土間の席がなく.客席はすべて階段席になっています。それも結構傾斜がきつく上方の席の友人は転がりそうで怖かったとか。石の座席は冷たくてここで先刻のクッシヨンの出番になりました。開演は2145.すっかり暗くなった夜空に星が瞬いていて舞台背後に高さ36m幅103mの石壁が建ち.アウグストウス帝の像が1999年夏にここに生きてる私たちを見下ろしているのでした。その巨大な壁にレザ-光線がオペラ座のバルコンを写しだし雰囲気満点のなか.「椿姫」の哀しく美しい序曲が始まりました。「椿姫」(ベルトランド・デ・ビリ-指揮.ルス・アン・スウエンソンSマルチェロ・アルヴァレスT.レナ-タ・ブルゾンB)ヴィオレッタ役のスウエンソンのソプラノがただただうっとり聞き惚れる素晴らしさ!高音も他の歌手ではなかなか出ない音程がでたようで拍手喝采を浴びていました。次々と有名なアリアやコ-ラスが続きあっという間に終演になり.南仏最後の夜を爽やかな風に吹かれながら名残惜しく帰途につきました。

翌日からミラノに戻り3泊.スカラ座で「セヴィリアの理髪師」「マノン」

を観て帰国しました。

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欲張り者の私ですのでオペラ.美術.のほかに食事やワインの美味しいところ

に惹かれてしまいます。それで必然的にフランスとイタリアヘ旅することが多くなってきました。

世界のオペラ劇場の情報は//www.operabase.com で見ることができます。

ヨ-ロッパの夏の音楽祭は人気がありますので.チエック怠りなく遅くとも

半年前にチケットとホテルの予約が必要です。来春4月のリヨンのチケットもう送ってきました。コンサ-ト形式のオペラなので一等席で6200円です。手数料も郵送料もなしでとても良心的です。

芸術の面から観たフランスの深さを旅を通じて味わって

いきたいと思っております。

Au revoir