オーベルニュ紀行その2  ビシー Vichy             

ホテルを出て、街の中心部を通り抜けると、とてつもなく長く続く屋根付きの歩道に行き当たります。その内側が庭のような広場のような公園の 様な、人が入れる空間地点でオペラハウスや、カジノらしき建物もあります。その向こう側には、また同じ長い屋根付きの歩道。

唇にたとえると屋根付き歩道が上下の唇、口の中が広場、唇の左右の付け根のところに、それぞれ温泉の出る建物があるという構成です。向こう側の屋根付き歩 道の中間地点付近の建物の中に旅行案内所office de tourisme
があります。そこで街の地図Plan de Villeをもらい、番号付きの散歩コースのモデルルートが示されているので、それに沿って街を歩くことにしました。二本の屋根付き道路が合わさった場 所、すなわち温泉の源泉source(スルス)を見学することにしました。ほぼ円形の大きな建物の中に入ると、さらに中心部は円形の柵で囲まれていて、人 々は木戸に鍵を差し込んで中に入り、立ち並ぶ別々の温泉の蛇口からコップに温泉を汲んで飲んでいます。飲む温泉療法です。鍵を持っていないし、どうした物 か、とうろうろしていたら、温泉療養中の親切なおばさんが、私の鍵で木戸を開けてやるから、お入りなさいな、と声をかけてくれて下さったので、柵の中に入 ることが出来ました。

*写真右上の人が入れてくださった親切なおばさん*
GdeGRILLE,HOPITAL,CELESTINS,CHOMEL,LUCASなどの温泉の蛇口があり、どれも酸っぱかったり、臭い がしたりして、おいしいものではありません。つまり薬と思えば飲めるというわけです。その中では酸味のあるHOPITALという温泉が飲みやすかったの で、ミネラルウォーターの空き瓶に詰めました。温泉療法の建物を出て、隣にある、ナポレオン3世が建立した立派な美しい建物に入ると、ガイドブックの写真 に載っているあの噴水のような源泉がみえました。

中のブティックでpastilles VICHY etatのCitron風味というお菓子を買いました。(明治製菓のカルミンのような、トローチのようなものですが、温泉成分が入っているのかどうか。日 本では鉱泉せんべいというのがありますよね。)
今年の夏はフランスでも暑くて、歩いているとお昼頃にはもうへとへとです。一旦、中心街に出て歩きながらレストランを探していたら、立て看板が目に入り、 その魅力的な昼食献立につられて路地に入っていくとRiviera Hotelの食堂がありました。二人で32ユーロ(一人前1,800円)と信じられない値段でフルコースがいただけるのです。見回すと、お客さんは高年齢 者が多く、皆さん顔なじみらしい、つまり湯治で連泊しているご老人達がお昼に食堂に集まって、私たちより軽い定食を食べながら談笑しているのです。私たち の料理は


前菜に小イカ、小タコのたくさん入った海の幸スープ、次に肉の串焼きなど、たっぷりのジャガイモ付きのメイン、次いで地元のチーズ盛り合わ せの一皿、そして最後にデザートと豪華です。たっぷりのデザートの盛り合わせで、満腹。妻は食堂のおばさんに勧められて、ご当地名産のリンゴのタルトを注 文。おいしいよというと、おばさんは喜んでいました。(ボリューム満点だけど、本当は我が家の妻の手作りアップルパイのほうがもっとおいしい)。元気に なったので、先ほどの温泉を横切って、その先の川岸に出ました。子供達が河川敷に作られた有料遊園施設(CLUBと呼ぶ)で、遊んでいます。
満腹だし、午後の日差しが暑いので、公園の木陰のベンチに寝っ転がって、こういう何もしないでボーとしている状態をバカンスというのだろうな、などと思い ながら、しばし木漏れ日と青い空を眺めていました。傍を二人でこぐ貸し自転車が楽しそうに走り抜けていきます。元気になったので、暑いけど我慢して歩い て、観光案内所でいただいた地図のコースを参照しながら、街の東側に離れてあるSurce des Celestinsセレスタン源泉をたずねました。

立派な建物の内部に源泉の蛇口があり、アルバイトの女学生とおぼしきお嬢さん達が、一杯いかがですか、と声をかけてきます。見ると、値段は 書いてなく、カウンター上の箱の中に小銭が沢山入っているので、お客さんの思し召し程度で良いらしい。財布の小銭を出して、それでコップ一杯ずつ温泉をい ただいて飲みました。源泉は建物裏の崖から湧き出ているようです。その後、古い建物が残っている旧市街を散歩して、ホテルに戻り、シャワーを浴びました。 足の疲れた妻がホテルで休んでいる間に、健脚の私は外に出かけ、源泉施設の前のESPLANADE NAPOLEON  III という広場のベンチに座り、ナポレオン3世が建てられた源泉の噴水のある美しいドームのある建物をスケッチしました。通りがかりの子供や、お年寄りが、き れいにかけているね、などと言いながらスケッチをのぞき込んでいました。その帰り道、昼間歩いた屋根付き歩道に、いつの間にか明かりがついて、沢山の夜店 が出ていました。土地っ子の手作りのお菓子(クルミ入り”野生ミルティーユ”黒い果物の一種)Gateaux niox et aux Myrtilles sauvages 直径15cm大、が一個2ユーロで売っています。バスケットの中には10個くらいしかありません。珍しいので急いで2個買いました。

ホテルに戻って、調べておいた駅前のイタリアンレストランへ歩いていきました。なんか献立表を見ているだけで、満腹になってしまいます。昼 食が重すぎました。予定を変更して、その近くの窯焼きピザ店に入りました。ピザ一枚にしておけば良かったのに、定食を頼ん でしまいました。


前菜はガチョウ肉のリエットrillettes(鵞鳥などをその脂またはラードで柔らかく煮、身をほぐしてから再び脂の中に入れて保存した もの。脂とともにパンやカナッペに添えて食べる)。これがとても美味しくて、付け合わせのパンが沢山あり、殆ど完食。その上、久しぶりに山盛りの新鮮な葉 サラダがでたのでガツガツ、そこまででお腹は出来上がり。ところが、定食なので2品目を注文しなければならない、お店の自慢のピザは具によって高安まちま ちなのに、定食ではどれでも良いという太っ腹、当然一番高い物を注文したら、サーモン、大きな有頭エビが所狭しとのって出てきました、ピザの大きさは優に 30センチを超えています。私の方はスパゲッテイを注文、出てきたのはふにゃふにゃのゆですぎたパスタにかすかにバジルの粉がかかっているような殆ど麺 100%の一皿で、やはりお皿は直径30センチ。だいいち、スプーンしか付いていなくて、フォークがない。どうやってスプーンだけでパスタが食べられると いうの! でも一口食べてもう要らないので、わざわざフォークを持ってくるよう(アポルテモア ユヌ フォルシェット)にはお願いしませんでした。なにし ろピザだけでさえも食べきれません。妻と二人で、生地は少々だけで、上のサーモンと、エビを全部引っぱがして食べました。最後のデザートは、軽いソルベ (シャーベット)で退散。感心したのは、飲み物で、ミネラルウオーターを注文する必要が無いし、お店の方も当然の様に、水道水をドンと大瓶に入れて持って きます。オーベルニュ地方はどこに行っても水道水が美味しいのです。それにしても、窓の外に座った当地のご夫婦を見ていると、大皿のヌードルを、一人で2 杯も平らげています。フランス人と日本人では胃袋の大きさが違うようです。腹ごなしに夜市を見て帰ることにしました。
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